give me your hand,honey?
眩しいほどに輝くシャンデリア
ヒールが埋まりそうなほどフカフカの絨毯
大きなテーブルの上に所狭しと並べられた豪華な食事
テセアラの一般家庭に生まれ育った人間が見たら卒倒してしまいそうな光景。
物だけではなく、この場にいる貴族達もまた煌びやかに着飾っている。
女は男の目を惹くために、男は財産を見せびらかすように。
一見和やかに歓談しているように見える彼らを横目で見やりながら、しいなはそっとため息を吐いた。
壁によりかかって自分の格好を見る。
最高級の絹で織られたというワインレッド色の、身体のラインが浮き立つような露出の多いドレス。
いらない、と断ったのに半ば無理やりメイクまでされてしまった。
本当はゼロスの家で待っているつもりだった。
だが
「俺、パーティなんて初めてだぜ!みんなで楽しもう!!」
と、ロイドにほのめかされて。
壁から身を起こして、会場を見渡す。
豪勢な食事を目の前に大はしゃぎするロイドとコレットと目が合い、手を振られた。
(嫌だ、なんて言えないじゃないか。)
振り返しながら、再び肉の塊に目が釘付けになるロイドに笑う。
ロイドの後ろに集まった婦人達によってその影が消える。
あれ?
ふと疑問が。
女性の群れの中にゼロスが見当たらない。
いつもなら女性に囲まれてニヤニヤしているはずなのだが。
会場を見渡してもそれらしき姿は見当たらない。
キョロキョロしていると、背後で声がした。
「しいなぁ〜。」
「!!!!!!」
ギョッとして振り向けば、そこには探していた紅い髪。
「な、なにしてんだい!そんなとこでっ!!」
背後、壁だと思っていた場所にかかっている布(カーテンだった)の後ろから紅い髪だけ出すようにしてゼロスが立っていた。
「いや〜、ちょっと今日はハニーの相手するの休もうと思ってな。
今頃どっかの熱血くんはパーティに夢中だろうからその隙においとましようかと思ってんだけど?」
「けど?なにさ。」
ふわりと手を取られた。
「私と一緒に逃げて下さいませんか?レディ。」
「はぁっ!?」
突然何を言い出すのか、としいなが眉を吊り上げるのを気にもせず、ゼロスの手が腰に回って抱き上げられた。
「ちょ、ちょっと!」
「あんま暴れんなよ。落ちて腰打つぜ〜?」
「っアホ!!」
普段なら上手くすり抜けられるが、このドレスでじたばたすると下手をすれば背中のリボンが解けかねない。
かなり不満だったがおとなしくゼロスの首に手を回すことにした。
「よし。到着。」
連れて来られたのはゼロスの部屋。
ようやく足が地について、しいながゼロスを睨む。
「ちょっと強引すぎるんじゃないかい」
静かに、けれど怒気を含んだ声。
「悪かったよ。でもこうでもしなきゃおまえ、ずっとあそこに突っ立ってただろうが。」
「気づいてたのかい?」
あの場から抜け出したかったことに。
「その顔に書いてあったからな〜」
「アホ神子……。」
ヘラヘラしているように見えて、一番感情に鋭いのはこの男だ、としいなは思う。
コリンが死んだときも、くちなわに裏切られたときも。わずかな距離を置きつついつも側で見てくれていたのは…。
「……ゼロス」
「ん?」
ソファに沈むようにして座っているゼロスの横に座って、そっと彼の肩に頭を預けた。
「……ありがと。」
「ばぁか。」
手袋を取った大きな手のひらがふわり頬に触れる感触。
胸が温かさに満たされる感触。
熱い唇が自分のそれに重なる感触。
全てが愛しい。
自分の指に感じた冷たい感触を最後に、しいなはそっと眠りに落ちていった。
「おやすみ、俺のスイートハニー」
目を覚ましたしいなが指にはまっている指輪に気づくのはもう少し後の話。
---後書き----
携帯サイトでリクエストして頂いた「舞踏会」です。
ちょっと手直ししてあるんですが…思った以上に甘口になってしまいました^^;
07/07/14